第11章 ただひとつだけ
「んや……、俺ちょっとトイレ行ってくるわ。あの2人が戻ってくるまでまだ時間ありそうだしな」
そういって土門も2人が消えた校舎へと駆ける。そして人目につかない場所を探すと携帯を取り出した。一応さっきの半田たちの話で彼女の想いの推測はできたのだがこれは報告すべきことなのだろうか。
正直言って鬼道の命令する偵察内容の内、花織のことは帝国の役には立たない。それでも心情的には過去に2人の恋を帝国サッカー部として応援していたのだし、鬼道の想いを推測すれば応援してやりたいと思うからこそデータを取っていた。
「一郎太くん……」
ふとその時、土門の耳に女の声が聞こえてきた。ひっそりと身を隠しながら声の主を探せば、風丸と花織が土門の隠れていた場の左斜め後ろに立っていた。どうやら彼らの所からこちらは死角になっているらしい。ちらりと土門はメイド服姿の花織へと視線を向ける。頬を染めて風丸を見つめる彼女は確かにふたり、いやそれ以上の男を虜にしても可笑しくないと思えた。
しかし、彼女の見つめる風丸は慈愛に満ちた瞳をしているにも関わらず、どこか哀しさを感じさせる。それは恋人を見つめる瞳にしてはあまりにも切なく寂しげなものだった。本当に複雑すぎて土門には理解できない。
土門は携帯をサイレントモードにし携帯を構える。帝国の、鬼道の為に2人に干渉する気はないが、これくらいは許してほしい。そう思いながら土門は携帯カメラのシャッターを切った。