第11章 ただひとつだけ
「お前がそんな風に感じてくれてるなら、俺は、嬉しいよ」
「本当……?」
「ああ」
風丸が花織の髪に指を絡めながら囁く。風丸は花織の身体を解放するとじっと彼女の表情を見つめた。やはり瞳は潤み、頬は桃色だったが先ほどには無かった照れくさそうな微笑みが風丸の瞳に映る。酷く胸が切なくなった。
「本当にそうなら、嬉しいな。……ね、一郎太くん。この格好どうかな?」
「……っどうって言われても、その……」
可愛い、とおもう。風丸の言葉は尻すぼみに小さくなって最後はほとんど聞こえないくらいだった。しかしきちんと花織の耳に届いたその言葉に花織は表情を綻ばせる。
「……一郎太くんがそう思ってくれてるなら、それだけで私は満足だよ。他の人にどう思われても一郎太くんがそう思ってくれるならそれだけで嬉しい」
「――――っ。まったく、お前は――!」
再び風丸が花織を抱き寄せる。
そんなことを言われたら花織を手放せなくなってしまう。……時が来れば自分は身を引くと決めたのに。
胸が苦しくて息ができなくなりそうだ。そっと腕の拘束を緩めて花織の顔を見つめれば、彼女もその白い頬を桃色に染め、柔らかで愛らしい微笑みを湛えて風丸を見つめていた。風丸は苦しくなる胸の鼓動を押さえて微笑みを返す。
きっと、鬼道だってこんな花織は見たことない。花織は、今この瞬間の花織は――――俺だけのものだ。