第11章 ただひとつだけ
「わぁーっ!花織先輩可愛いですっ、後で一緒に写真撮りましょうね!」
「うん……」
いつにも増してテンションの高い春奈が花織の手を握る。花織はどこか真面目な顔をしたまま頷いた。それを不思議に思ったのか春奈は首を傾げる。
「花織先輩、元気ないですね?あ、風丸先輩のこと気にしてます?大丈夫ですよ!こんなに先輩は可愛いんですから、きっと喜んでくれますって!」
「本当に、そう思う……?」
花織は浮かない顔で春奈を見つめた。その表情は羞恥心や不安が入り乱れ、今にも泣きだしそうに瞳が潤んでいる。白い頬はリンゴのように赤い。
「私、一郎太くんに制服とかジャージ姿でしか会ったことなくて……。こんな格好、春奈ちゃんたちは可愛いし、似合ってるけど、だからこそ見劣りしそうで……。彼が、私に幻滅しないか不安で」
花織は俯く。どうしようもなく恥ずかしく不安だった。今からやろうとしていることも含めて、似合ってなかったら、という気持ちがぬぐえない。
「私、春奈ちゃんとメイド喫茶の話をしてからずっとモヤモヤしてて……。自分のことを棚に上げてるのははっきりわかってるけど……。……私、一郎太くんを誰にも取られたくないの」
消えそうな花織の声に春奈は唖然とする。呆れると同時に笑い出しそうになった。どれだけこの人は自分に自信が無いのだろう。風丸が花織を嫌いになるはずがないことなど、第三者の春奈が見ても明らかだというのに。そもそも風丸に他の女の子を見る暇などない。なぜなら、花織を見ているため忙しいからだ。ことに自分以外の男と花織が話している時には口にはしないが視線で人を殺せそうなほどだというのに。
「ないですって!風丸先輩は花織先輩しか見えてませんよ!ほら、証明しに行きましょう!木野先輩も夏未さんも早く!」
ぐいぐいと夏未と花織の手を引いて春奈が先陣を切って更衣室を出る。それをほほえましげに見つめながら秋も彼女に続いた。