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恋風

第11章 ただひとつだけ



迎えた地区予選準決勝、舞台は秋葉名戸グラウンドである。電気街の中にあるこの学校はグラウンドの真正面に大型ビジョンが設置されている。それ以外は何の変哲もない、しいて言えばゴールネットが桃色なだけのサッカーグラウンドである。

そんな秋葉グラウンドに到着するや否や、雷門中の花織たちマネージャーは何故かメイド服を着用した秋葉のマネージャーに呼び出された。なんだろうと疑問に思いつつ、彼女たちについてゆく。しばらく歩いてようやく彼女たちが足を止めたのは女子更衣室という札の掛かった部屋だった。そして開口一番、秋葉のマネージャーはとんでもないことを言い始めた。

「我が校の試合ではマネージャーはメイド服の着用が義務となっております」

何事でも無いように彼女は笑っている。雷門中のマネージャーは呆気に取られた。いち早く我に返った夏未が憤慨して秋葉のマネージャーに向かって声を荒げる。

「誰がそんなこと決めたのよ!」
「我がサッカー部の監督です~」

さらりと答えた彼女は秋、春奈、花織、夏未の順に件の服を手渡していく。

「私、こんなもの着ないわよ!」
「いいじゃないですか夏未さん。こんなの滅多に着ないんですし。ね、木野先輩!」
「そうだね」

本気で嫌がっている夏未とは裏腹に秋と春奈は楽しそうだ。確かにメイド服なんてふだん着る機会などないし、実際、可愛い服であるのだから多少憧れもあるのだろう。

「あなたは着るなんて言わないわよね……?」
「着ます」

助けを求めるように夏未は花織を見たが、それも虚しくきっぱりと花織は言い放った。その眼はどこか決意のようなものが見え隠れしている。夏未にそう告げ、花織は俯くと手の中のメイド服を強く握りしめた。

***

ヘッドドレスをつけ、髪型を鏡で確認する。ようやく納得のいく形でセットをし終えた花織は立ち上がるとスカートの裾を引っ張った。物凄く丈が短いのだ、前かがみになれば下着が見えてしまいそうなほどに。しかも足を覆っているのはタイツではなくニーハイソックス……屈むときは気をつけなくてはと花織は1人意気込んだ。

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