第10章 悲壮の決意
この時花織は、自分が鬼道に会いたいがために無茶苦茶な理由付けをしているということを自覚していなかった。スピーカー越しに鬼道の笑う声が聞こえる。
「良い判断だ。……待ってるぞ」
電話が切られると花織はポケットへと携帯を仕舞い、マネージャーらの元へと戻った。しかし、花織の心の中は先ほどただ純粋に雷門イレブンを、風丸を応援していた時とは違い、言葉では言い表せないほど複雑な思いが花織の中を渦巻いていた。
***
試合終了後、花織は鬼道に呼び出された場所へと足を運んでいた。あの後、厳しい試合展開が続いていたが、円堂による『ゴールキーパーが自らドリブルをし、シュートへ持ち込む』という前代未聞の行動を行ったことにより、御影の中のデータサッカー、守りに逃げるサッカーは崩壊した。そして互いが全力でぶつかりあうサッカーの末、2-1で雷門が2回戦を制した。
いい試合だった、花織は思う。サッカーを始めて間もないが、本当の実力同士がぶつかりあった熱く、サッカーの楽しさのにじみ出た試合であった。そしてそんな試合を制した晴れやかな勝利の中を抜け出し、彼女はここへやってきたのだ。
きょろきょろとあたりを見回す。あの人の姿をただ探した。
「月島」
優しい声で名を呼ばれた。帝国にいたとき、たまに声をかけてくれていた……。あの頃と全く同じ口調で。
「鬼道さん、私……」
私服姿で花織を見つめる鬼道へ花織は言葉を掛けた。花織は鬼道に聞きたいことがたくさんある。どうして電話番号を知っているのだ、何故こんなところへ呼び出したのか。そして――、あの日の口付けの意味も。
花織が言葉を続けられずに黙り込んでいると、鬼道は不敵な笑みを浮かべ花織の傍へと歩み寄った。
「準決勝進出おめでとう、と言いたいところだが……。それよりお前は俺に聞きたいことがあるようだな、月島」