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恋風

第1章 それはまさに




しばらくして宮坂は戻ってきた、先輩に軽く注意されたようだがそこまで気落ちしているふうでは無さそうで燥いだ声で花織と風丸に声を掛けた。

「さぁ、走りましょう!!風丸さんも!」

宮坂の声にせかされて花織と風丸はスタートラインに並んだが花織は少し緊張していた。何しろ相手は男子、普通に考えて身体能力値から見て勝ち目はない。

スターティングブロックに足を置き、ちらりと横を向けば隣に並んでいる風丸と目があった。男らしい真剣そうな表情に思わず花織の目が大きく見開かれる。胸の鼓動が大きく波打つのを感じた。

ホイッスルの音と共にスタートダッシュを成功させ、前へ出たのは花織だった。だがそれをやすやすと青髪が追い抜いて行く。

速い……!

花織がそう感じたときにはすでに時遅し、風丸が完全にリードしていた。そしてそのまま彼との差は広がらず狭まらず、花織はゴールをした。

「うわあ!月島さん速かったです、女の子なのに」

感心した様子で宮坂が言う。花織は宮坂には僅差で勝ちを納めていた。それでも辛くもと言ったところだろうか。

「ふふ、ありがとう。でも風丸くんには抜かれちゃった」

嬉しげに笑う花織だったが、内心とても複雑だった。

負けたこと、そして後ろから抜かれたことが何よりも胸にのしかかった。短距離で後ろから抜かれるというのはかなりの実力差があるということに他ならない。相手が男子だということを差し引いても花織にとって辛い事実であるということには変わりない。

風丸との速さの距離が、花織が心から想う人との距離に思えた様な気がした。一瞬だけ寂しげな表情を花織は浮かべる。広がることはない、しかし狭まることもないあの人との距離。

陸上など負けてしまえばその他大勢と変わりはしない。事実、あの人も花織のことをその他大勢、いやそれ以下としか見ていなかった。あの時、どれだけ悔しい思いをしたことか。

「月島?」
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