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恋風

第10章 悲壮の決意



か細い声でそう呟き、花織は部室へ来た目的も忘れて部室を飛び出す。後に残された土門は未だに彼女の零した言葉に受けた衝撃の余韻が身体に残ったままだった。……そんな、まさか。

「嘘だろ……」

鬼道さんが月島を振った?そんなことがあるのだろうか、土門には信じがたいことだった。

花織が鬼道を振った、というのなら多少疑問は残れど信じられない話ではなかった。だが、逆なら話は別だ。土門は鬼道が花織を振ったということが信じられなかった。

花織に対する鬼道の態度は誰がどう見ても、特別なものであったのだ。いや、『あった』ではなく『ある』が正しいのではないかとさえ思う。実際に未だに鬼道は総帥の命令でないはずの花織の情報まで集め、花織の安否を気にしているのだ。それに彼女に話しかけた人間はその日1日どれだけ鬼道と気まずい空気でいなければならなかったことか……。これで彼女を特別扱いしていないと考えることの方が難しい。

そして花織の表情もどこか気にかかった。彼女はいま風丸と恋仲にあるはず。それなのに"鬼道"という単語に動揺し、鬼道からの伝言に酷く傷ついたふうだった。それだけではない、花織の言葉の端々に鬼道に対する特別な想いを感じた。それは振られた、という花織の言葉から考えると、まるで鬼道を未だに好いているように土門に感じさせた。

不可解なことが多すぎる、鬼道さんの行動も。月島の想いも。

俺が首を突っ込める話ではないが……。土門は携帯を握りしめる。この不可解な2人の言動の原因を知りたいと思わずにはいられなかった。
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