第10章 悲壮の決意
「あのさ、月島……。鬼道さんにお前がもし、俺にそんなことを言い出したら言えって言われてたことがある」
鬼道さん、花織もその名前に顔を顰めた。土門は花織の肩に手を置き、静かに言葉を続けた。
「お前が元帝国学園の生徒であるということを総帥は知っている。……もしお前がバカな行動をとればお前は元より、お前の恋人がどうなるかわからないぞ、だと」
「そんな……!」
花織の表情が酷く傷つけられたようなものに変わった。事実鬼道の伝言に花織は傷つかずにはいられなかった。いくら酷くても脅迫などをする人ではなかったはずなのに……。花織が唇をかみしめていると、花織の背に合わせるように土門が背を屈める。
「あのさ、月島ちゃん。俺が思うに鬼道さんの言葉、脅迫じゃなくて忠告だと俺は思う。……鬼道さん、むしろ 月島ちゃんのこと心配してるし」
「鬼道さんは……、私の事なんて何とも思っていないはずです」
土門が困ったように言葉を紡いだ。だが花織の表情は暗く、静かに首をふる。
土門の言葉に嘘はない、毎日毎日鬼道に報告の電話を入れているが一度鬼道が花織について土門に尋ねたことがある。”月島はどうしている"と。
彼女が帝国にいたときのことを思えば、やはり彼女は鬼道のお気に入りであるのだから鬼道が心配するのも土門にとっては至極当然のように思えた。それほどの間柄に見えていたのだ。
「月島ちゃんは、鬼道さんと両想いだったんじゃ」
「そんなわけない!むしろ、私は鬼道さんに振られて……!」
つい感情的になって花織が土門の手を振り払った。しかしすぐにしまった、というような表情を浮かべて口元を抑える。土門は驚愕の表情を浮かべていた。すっかり気まずい空気になってしまった、花織は俯いて土門に背を向ける。
「今のは……、忘れてください」