第10章 悲壮の決意
「なんだ……。まあ、月島ちゃんならいいか」
「何を、しているんですか?」
問いかけなくともわかっていた。床に散らばった資料、ノートパソコン、土門の表情……。それ以前に彼がこの学校に来た理由を考えれば答えなどわかった。
「それ、総帥に……?」
「ん、正確には鬼道さんに。鬼道さんがチェックして、総帥に伝える価値があるなら鬼道さんが総帥に伝えるらしいぜ」
鬼道、という名前に思わず花織の表情が陰る。土門はそんな花織を見つめて首を傾げた。
先日、彼女は鬼道からすでに口止めをされていると聞いた。だからこそ、土門の仕事をわかっているのなら一刻も早く帰ってほしかった。このままだと彼女以外の人間にも見つかる可能性があるうえ、明るいキャラを保つのも面倒だったのだ。だが、土門の思いとは裏腹に花織は帰る意思を見せず、それどころか土門の予想だにしなかった言葉を口にした。
「土門さん、……私」
「……?」
「土門さんがスパイだってこと、みんなに告発するつもりですから。鬼道さんにも伝えてください。……いくら貴方の頼みでも、私は雷門中のマネージャーとしてチームに不利を持ち込む気はない、と」
決意を露わにしたような、しかしどこか翳りのある表情で花織が言う。表情にも言葉にも出さなかったがずっと迷っていたのだ。これを告発すべきなのか、黙っておくべきなのか。
鬼道の頼みを無視し、彼の信頼を落としたくなかった、しかしそれと同時に風丸に不利を齎したくもなかった。結果、彼女が考えた苦肉の策は、あらかじめ鬼道に自分は鬼道の要求を飲むつもりはないと告げてしまう事だった。
実に浅はかな考えではあるが花織にはそれが最善だとしか思えなかった。花織の言葉に土門が眉を顰めて立ち上がる。