第10章 悲壮の決意
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もうすっかり辺りは茜色に染まってしまっている。花織はうんと伸びをして歩き出す。今日は風丸とは練習をせず、後はまっすぐ帰るだけだった。
「また明日ね、一郎太くん、みんな。気をつけてね」
「ああ、また明日な」
花織が別れの挨拶をしながら風丸、円堂、豪炎寺に手を振る。普段何の用事もないときは途中まで風丸と帰りを共にするのだが、今日は雷々軒へ寄り道をしてから帰るらしい。さすがに中学生とはいえ、女子である花織は夕食前にラーメンを食べるほどお腹が空いているわけでもない。それに彼らの男の子同士の付き合いもあるだろう。そのため、こんな風にどちらかに用があるときは別々に帰ることにしていた。
ひとりで花織は帰り道を歩く。しかし雷門中を出て3分も経たないうちにその足は止まった。
「あー……」
声を漏らして鞄の中を漁る。しばらく何かを探して鞄の中を引っ掻き回していたが、すぐに花織は渋い顔で踵を返す。どうやら部室に携帯電話を忘れたらしい。無くても困りはしないが一応貴重品に入る部類だ。個人情報の問題もあるのだし、この距離なら戻った方が妥当だろう。
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部室の前まで再び戻れば、人の気配は全くない。花織が学校を出てからの数分でサッカー部のほとんどの部員は帰路に着いたらしい。職員室から鍵を借りてこなければいけないだろうか……そんなことを思いながらも花織は部室のドアノブに手を掛けた。
「あれ……?」
古びた金属音がして部室の戸が開く。中は真っ暗で誰もいないというのに――最後に出た人間が鍵を閉めていないのなら不用心この上ないことだ。そんなことを思いながら花織は部室の電気をつける、花織の考えは外れていた。花織の口から思わず声が漏れる。
「土門、さん……」
「……月島」
灯りのともった部室にはいくつか資料が開かれ、床に置かれている。そしてその資料の真ん中にノートパソコンを開いた土門がいた。土門の表情も初めは驚愕に包まれていたが、相手が花織だと分かると目に見えて彼は安堵をしたふうだった。