第10章 悲壮の決意
「そんなわけないさ、十分練習になってるぜ?」
「……そう言ってくれるのは嬉しいけど、実際私と練習するよりも他のみんなと練習した方が身になるのは確かだし」
花織はペットボトルをギュッと握り、俯く。もっと風丸の役に立ちたかった。マネージャーとしてのサポートも大切なのは重々感じている。しかしもともと陸上部員として彼と共に走ることに喜びを感じていたのだ。だからこそ、この頃は特にこう思う、彼と同じフィールドに立ちたい、と。試合に参加したいとは言わない、むしろ試合の時は傍で彼の勇士を見ていたいと思う。しかし彼と共に走る喜びをたまには実感したいと思うのだ。
しかしこのレベルなら軽いウォーミングアップ程度にしかならない。花織にとってそれは彼の時間を無駄にしてしまっているようでどこか申し訳なくて仕方がないのだ。
「私……せめてあともう少し、サッカーが上手かったらな」
「十分上手いよ、それに俺は花織と一緒に練習できて楽しいぜ」
風丸が楽しい、という言葉に花織が少し嬉しそうにはにかむ。彼の優しい言葉を聞くとすぐに不安な気持ちも、劣等感もどうでもいいと思えてしまう。
「一郎太くんがそう言ってくれるなら……いいかな」
「ああ」
風丸がぽんぽんと花織の頭を軽くたたく。花織は甘い胸の高鳴りを感じつつ、ようやく彼のくれたドリンクに口を付けた。渇いたのどにさっと冷たさが染み渡る。
「そう言えば……円堂くん、必殺技に結構固執してたよね。一郎太くんは何か必殺技、作らないの?」
「そうだな、作ろうとは思うんだが……」
少し困ったように風丸は髪を揺らす。きっと何から考え、どうイメージをしてよいのかも分からないのだろう。しかも部での練習では必殺技の練習を禁止されている。自分でなんとなく練習することも、チームメイトの技を参考にすることもできない。しかし、風丸自身何か必殺技がほしいとは感じていた。自分の持ち前のスピードを生かした必殺技を。
花織は風丸の手にそっと自分の手を重ねる。風丸が目を見開いて花織の顔を見れば花織も柔らかい笑みを浮かべて風丸を見つめていた。
「ね、一緒に考えてみない?私、一郎太くんの必殺技、見てみたいな」