第2章 start point
「……そうだね、結論を言おう。
君は、マフィアに関わるような事を何一つしていないよ。」
少し重い声で、ティモッテオは確かにそういった。
「じゃあなんで…、私を…?」
「……選ばれたから、
ただ、それだけだ」
ドクン、ドクンと心臓の脈打つ音がうるさく響く。
ー選ばれたから。
そう短く告げたティモッテオは、無言のまま席を立った。
それに反応することなく葵はゆっくり動き出したかと思うと、ポスンと乾いた音を立ててソファにもたれかかった。
……選ばれたから、選ばれたから。
……何に?
その自問自答が、葵の脳内をグルグルと駆け巡る。しかし答えが出るはずもなく、その自問自答はティモッテオの言葉で終わりを迎えた。
「いまから話すのは、さっき言った"死ぬ気の炎"や、この力の始まりの話。
残念ながら、正確な文献は残っていないから私が見聞きしたことを憶測で伝えざるを得ない部分もある。
とてもややこしく、それに非現実も甚だしい話だ。
ゆっくり話すから、どうか受け入れて聞いて欲しい」
そう言うと、ティモッテオは再び椅子に座った。
そうして二人を挟むテーブルの上に、一枚の絵と本を置いた。