第2章 start point
先ほどまでリングを見ていたティモッテオの目が、葵を映し出す。
嫌な予感だけが、脳裏をよぎる。
少し震え気味に薄く開かれた葵の口から、何かに押し出されるように言葉が零れた。
「ーそれが、私だというんですか?」
ティモッテオからの返事はない。
先程まで時折細めていた優しげな目は、今は複雑な色の濁りを見せている。
はは、と葵は笑った。
「本当ですか?」
ティモッテオは驚いた顔で葵をみた。
その言葉は、落胆などではない。
言葉に、楽しいおもちゃを見つけた子供のような、そんな弾みがあったからだ。
「私って、そんなすごい人なんですか?
別にこんな大掛かり…ドッキリでもないですよね。
なんか漫画みたい!!」
「…驚かないのかね」
楽しげに話す葵の顔をみて、ティモッテオは少し表情を和らげた。
その表情をみて葵も、ふふ、と笑みを零した。
「驚いてますよ、正直そんなファンタジックなこと信じてませんし。
いやでも、本当ならすごいなって。なんかこう、漫画の主人公になった気分です!」
ティモッテオは大きくため息をつくと、クスリと笑って見せた。
「ーそうか、成る程。それが、案外正しい反応かもしれないね。」
「でもその、トゥリニセッテとやらができたのって、このボンゴレファミリーが出来るくらいの頃ってことですよね?て事は、大きな石だったのはそれより更に前。
私って実は不老不死なんですか?」
「いいや。それについても説明しよう。」
ティモッテオは本ともう一つの箱を葵の前におき、再び話し始めた。