第2章 start point
「まず、私はボンゴレファミリー9代目ボス・ティモッテオだ。」
「あ、私はー……」
「空街 葵さんだね。君を連れて来て欲しいと彼に頼んだのは他でもない私だ、当然知っているさ」
そうですよね、と苦笑を浮かべる。
ボンゴレファミリー。何かの企業だろうか?
葵は頭の中で考える。
その疑問に、ティモッテオと名乗った男が応えた。
「マフィア、だ。イタリアのね」
少しの沈黙。
マフィア。
映画や漫画の中で、耳にする言葉だった。
簡単に言えば、犯罪組織。
人を殺すことを簡単にやってのける、
フィクションのなかの"悪役"。
「フィクションだと、決めつけないこと。」
色々と混雑していた葵の脳内に、ティモッテオの言葉が響く。
……だから、か。
葵心の中で呟いた。
そしてゆっくり同意するように頷いた。
「じゃあ、続きを話そう。
そもそもマフィアというものが何かは分かるかい?」
「犯罪組織……としか…」
「うん、間違ってはいないね。
マフィアは表に出ない"裏社会"に属する組織、つまり日陰者だ。
我々ボンゴレファミリーは、そんな"裏社会"のなかでもトップの地位にもう何百年と座り続けられるほどの勢力を持っている。
それは何故だと思う?」
「…強かったから、ですか?」
ティモッテオはうん、と頷いてみせた。
「そう、強かったんだ。
我々ボンゴレファミリーは、他のファミリーとは比べ物にならない強さを持っていた。
それは初代ボスの時代から紡がれてきた力。
"死ぬ気の覚悟"によって生み出される……」
ティモッテオは言葉を止める。
すると橙の石がはめられた指輪が光る右手を、開いたまま前に出した。
なんだろうら、と覗き込んだその時だった。
ふわり、と風のようなものが葵の頬を撫でた次の瞬間、目の前にどこからとも無く炎が現れた。
「わっ!!」
反射的に顔を離す。
その炎は、とても透明度が高く、澄んだ橙色をしている。
そうしてティモッテオの右手の上で、ゆらゆらと揺れていたのだ。