第2章 start point
そりゃ、そうだよなぁ。
葵はなんとなく、わかっていた。
いかにも怪しげな男に"頼んで"まで、この目の前の人は葵を"内密に"連れて来たかったのだ。
状況からして、他言無用は当然言われると予測できていた。
ただ、後者の言葉には疑問がある。
「フィクション……って、どういうことですか?」
「そのままの意味だ。
あり得ない、と決めつけずに聞いて欲しいんだ。
そうなってしまったら何も説明できなくなってしまうし、君はなに一つ納得出来なくなるだろうからね。」
あり得ない、と考えてしまうほどの話。
過去の自分を振り返る。
きっとこの状況にも訳があるのだろうが、なに一つ思い当たる節がない。
「そんなに身構えないで…と言いたいところだが、少し真剣に聞いて欲しいんだ。
場合によっては、君の未来に関わる話だから」
え、と短く声を漏らした葵を9代目は真っ直ぐに見る。
和らいでいた空気が、一気に冷めるのをじわりと感じながら、葵は手をティーカップから離し膝の上においた。
ありがとう、と言うと
9代目はまず自己紹介から始めた。