第5章 オリエンテーションと本と放課後
翌日になると、分厚い冊子が配られ青峰はなんだか面倒くさそうに表情を変えるが、今日の一番の目的はユイと話す事なので、サボりたい気持ちを抑え、体育館へと入る。
マンモス校なだけあり、人数は相当でこれならクラスでやったほうがいいのではないか?と疑問が出るがどうやらこの高校の伝統らしい。
高校に入ればある程度自由になると思っていたがどうやら「学生らしく節度を持つ」事が大事らしい。
先ほどから、舞台に立つ教師は節度節度を繰り返している。
「あー、では30分の交流時間に入る。体育館からは出ない様にして…」
教師の言葉に桃井が、青峰の元に駆け寄ってくる。
「青峰くん!」
「おぅ」
話しかけるチャンスとばかりに、青峰は辺りを見渡す。
高い身長がこんな所で役に立つとはと思いながらも、青峰はユイの姿を捜す。
ユイはクラスの列の真ん中で一人本を読んでいた。誰かと話す気はないらしく真ん中という事で更に寂しそうに見えて青峰は小さく舌打ちをしてユイの元に足を動かす。
ユイの目の前に立つがユイは変わらず本から目を離さずにいる。
本に集中しているのか、それとも周りに関心がないのか…。
「ユイ…」
自分には似合わない少し緊張した声が上がり青峰は自分が緊張しているのだと理解した。
「…」
「…ユイ…、なぁ」
何度か名前を呼べば、ユイはため息を吐いてゆっくりと顔を上げる。
相変わらず、彼女の表情は無く青峰は残念だと息を吐く。
「…何か?」
「へ?あ、あぁ!その…そのよ…」
「…」
「…」
「…話がないのでしたら、話しかけないで貰えますか…読書の邪魔なんですけど…」
「っ、あー、それ!その本、なんつー、タイトル?」
「は?」
あぁ、失敗した。と青峰は心の中で肩を落とす。