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トリップしちゃいました

第27章 夏祭り


さつきに手を引かれて社殿に設置されている賽銭箱の前まで来た。


さつきは財布からお金を取り出し、賽銭箱に投げ入れ、手を合わせ何かを願っている。


私はその様子を青峰くんと後ろで見ていた。


「ねえ、さつきは何をお願いしてるのかな?」


「さあな。」


「ふーん。にしてもほんとに黒いわね、青峰くん。」


「ほっとけ。」


青峰くんは拗ねたようにそっぽを向いてしまった。


冗談でもないし、本当のことだから弁解も何もないし放っておく。


しばらくして、さつきもお願い事が終わったのかこちらに向かってくる。


「由良ちゃんは何かお願いしなくていいの?」


「私の願いは神様に願うものじゃなくて自分で叶えるものだからいいの。さ、終わったんなら早く屋台行こ!」


さつきの手を引っ張り、屋台の方に向かう。



「じゃ、俺あそこで待ってっから。なんか食いもん買ってこい。」


「え?青峰くん行かないの?」


「こんな人ごみじゃ、行く気失せるし。肉だ、肉買ってこい。」


「えー!行こうよ、青峰くん!せっかくお祭りに来たのに行かないなんてもったいないよ!」


色んな屋台が目に付く中、さつきとどこを回るか作戦会議を繰り広げようとしていたその時、青峰くんの宣言が発表された。


こんなに楽しい場所を目の前にしても動じないというかいつも通りというか。


青峰くんらしさがここでもまた滲み出る。


まだ入り口なのに入り口に入る前から行かないと言われるのが予想外で驚いている。


でも青峰くんが行きたくないと、ここで待っていたいというなら仕方がない。


「さつき、早く行こ。こんな色黒は放っておいてさ!女の子同士二人で楽しもう。」


「う、うん。」


青峰くんを未だ説得中のさつきの肩に手を置き、そう言った。


そして、さつきの手を引き、屋台の方に歩き出し、笑顔を向ける。


「おい、色黒ってなんだよ!おい!」


後ろの方でうるさく吠えている色の黒い猿がいるが、気にせずさつきと手を繋いで屋台の方に向かった。
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