第27章 夏祭り
「由良ちゃんお待たせ~!」
淡いえんじ色に小さな花を咲かせた浴衣のさつきが手を振ってこっちに来る。
隣には夜の闇に紛れた黒い人影が。
「青峰くん、黒すぎて分かんなかった~。」
あはは、と笑って冗談めかしく言う。
こうして見ると、改めて青峰くんの黒さが分かる。
その青峰くんは面倒くさいという顔をしている。
さつきに強引に引っ張られてきたのかな、と簡単に推測出来た。
それでも一応着いてきた青峰くんは幼馴染思いの優しい男の子だ。
「さて、行きますか!あの楽しい世界へ!」
私は体ごと後ろを向き、階段の上を指差した。
その時、決め顔も忘れない。
空気が私一人だけ違うのも気にしない。
「なんだそれ...。」
「そ、そうだね...行こう!」
青峰くんは空気を読まず、さっさとスタスタ階段を上り始めてしまう。
さつきは私に若干引いてはいたが、でも青峰くんとは違い、私の手を引いて青峰くんの後を追うように階段を一緒に上った。
「うわぁ...人すごーい!屋台も沢山あるし!」
階段を上り終え、目に付いたのは参道から溢れんばかりの人と沢山の煌々とした屋台。
自分の歳も考えず、そんなことは忘れてはしゃいでしまう。
「ねえねえ、どこから行く?」
「まずはお賽銭から!先に終わらせたほうがいいでしょ?」
「え~...早く屋台行こうよ。早くしないと売り切れちゃう!」
「大丈夫だよ、由良ちゃん。そんなに早く売り切れないって。」
私は早く屋台に行きたい気持ちを抑えきれず、屋台の方をじっと見続けるが、さつきに手を引かれて社殿の方に連れていかれる。
これではどちらが大人なのか分からない。