第27章 夏祭り
「桃っちたち、お祭り行くんスか?」
「そうなの。きーちゃんも来る?」
「いいっスね~。でもごめん、今日はモデルの仕事があるんスよ。だから二人で楽しんできて。」
「そっか、残念だね。」
お昼休憩中、体育館でみんなで丸くなってお昼を食べていた。
そこで今日の夜にあるお祭りのことでさつきと話していると、私の隣に居た黄瀬くんが話に入ってきた。
さつきが黄瀬くんも誘うが、黄瀬くんは仕事があるらしく行けないようだ。
私としては、来てくれなくて良かったと安堵しているところだが、その気持ちは心の中に閉まっておく。
「由良ちゃんて浴衣持ってる?」
「うん、持ってるよー。」
「それじゃあ、集合は神社の前でいいかな?」
「オッケー。」
嗚呼、楽しみだ。
数年前、さとりんからもらった浴衣で久々のお祭り。
楽しいお祭りになる、そんな予感がする...!
夕日も沈み、すっかり暗くなった空を見上げる。
階段の上を見上げると、騒がしい声と煌々とした屋台が立ち並んでいた。
久々に袖を通した浴衣を見て一人で微笑む。
なんだか浴衣を着るだけで楽しい気分になっちゃうなぁ。
押入れの奥から引っ張り出してきたかいがあった。
段ボールの中に入っていたのだが、その中には浴衣だけではなく、下駄や簪、帯留め、それと浴衣のいろは本まで入っていた。
それらを段ボールの中から出し、いつも下ろしっぱなしの髪の毛をアップにして、椿の花が咲く簪を着けてみた。
早く上に行ってしまいたい衝動に駆られるが、さつきの到着を今か今かと待ち続ける。