第26章 風邪っぴき
最終的に残ったのは、私と青峰くんと虹村さん。
他のみんなはさつきが一位、紫原くん二位、黄瀬くん三位、テツヤが四位という結果でもう抜けている。
私たちはお互いの顔を睨み合っていた。
元々目つきの悪い虹村さんと青峰くんが交互に私のことを睨んできて少し怖かったが。
私の手元にはジョーカーがある。
これを虹村さんが引いてくれないとビリになってしまう。
虹村さんが引く番になって、私の顔とカードを交互に睨みながら慎重にカードを選んでいく。
「...ちょっとは表情変えるとかしろよな。」
「どうして?」
「俺が負けるだろ。」
そういうこと...。でもどんな風に変えれば...?
虹村さんの言いたいことは分かったが、どこでどのように表情を変えればいいか分からなくて、結局無表情で虹村さんの顔だけをじっと見ていたら虹村さんがジョーカーを引いてくれた。
その瞬間虹村さんの顔が歪む。
その顔は見た青峰くんもなんとなく察したのか嫌そうな顔になる。
私は青峰くんからカードを引いて、自分の手元に同じカードがあったのを確認してそれを引き抜いた。
私のカードはあと一枚だけということで虹村さんがこのカードを引いたら私は抜けることが出来るわけだ。
青峰くんの番になって虹村さんを睨みつけている。
目つきの悪い二人が睨み合っていて、傍から見れば拳と拳のぶつかり合いが始まるものと思うものだが、二人の手に握られているのはトランプ。
青峰くんがジョーカーを引けば虹村さんの勝ち、虹村さんの手にそのまま残れば青峰くんの勝ち。
青峰くんは虹村さんが私にやったみたいに一枚一枚カードを触っては顔を見て反応を見ていた。
そのおかげかは知らないが、青峰くんはジョーカーを引かなかったようだ。
青峰くんは笑顔でガッツポーズをみんなに向け、一方、ジョーカーが手元に残ってしまった虹村さんは今にも何かしでかしそうな悪人面をしている。
きっとその顔が虹村さんの悔し顔なのだろう。
怖い...。
そう思ったのは私だけではないはず。
青峰くんが抜け、虹村さんの番になり、私の手元にある最後の一枚を引いて私が抜けた。
虹村さんの手元にジョーカーが残って負けという結果になり、ババ抜きは終わった。