第26章 風邪っぴき
「起きた?おはよう。」
「...にじむら、さん。」
「さっき来たときより熱上がってね?汗もかいてるし。」
はっきりした視界はあるが、さっきから言われていることが理解出来ない。
頭が熱くて、でも体は寒くて。ただそれしか答えられない。
「とりあえず汗かいたしこれに着替えような。って、あれ?桃井は?」
虹村さんが後ろを向いて誰かを探している。
「桃井なら仕事が終わり次第こちらに向かうと言ってました。」
「そっかぁ。じゃあ先に汗だけ拭くか。こんなタオルしかなくてごめんな。」
私の体を起こし、支えながら少し汗のにおいをさせるそれで私から流れる汗を拭き出した。
後ろの髪を持ち上げられ、首元から拭いて、顔、腕と順番に拭かれる。
さすがにパジャマに隠れる部分は拭かなかった。
その内、明らかにこの場にいる男たちには出せない高い声が室内に響く。
さつきが来た。
ぼんやり頭でそれだけは分かった。
「お疲れ様。早速だがお願いできるか?」
「うん。着替え終わったら呼ぶから。」
「分かった。じゃあみんな、一旦廊下に出よう。」
赤司くんから何か説明を受けて、さつきがみんなをこの部屋から追い出した。
赤司くんの言葉で室内にいた男が全員いなくなった。
「虹村さんから着替え預かってきたから、これに着替えよっか。」
「うん。」
パジャマのボタンが一つ一つ外されていく。
「由良ちゃん、早く良くなってね。由良ちゃんいないとつまんないの。」
「...がんばる。」
服を脱がされて、汗も拭いてもらった。
「うん!よし、あとはこれ着てー....着替え完了!」
ちょっとおっきい。
さつきがみんなを呼びにいく。
廊下にいたみんなが部屋に戻ってきた。
廊下は暑かったらしく、数人がだらしない顔になっていた。
「ちょっと大きかったな。」
「うん。」
虹村さんがベッドに近づいてきて私に声を掛ける。
「オメーの着替えも家から持ってこればよかったな。」
「持ってきていなかったんですね。」
「そうなんだよ。これは俺の完全なミスだな。」
そう言って私の頭に手を乗せた。