第26章 風邪っぴき
赤司くんとさつきに事情を説明する。
「それはつまり、精神的なものということだね。」
「うん。」
納得したように頷く赤司くん。
「それなのにこいつ、無理して薬飲みやがって...」
「薬飲むのは別に平気だもん...。」
「どういうことだ?」
虹村さんの呆れ声に私が反論すると、再び尋ねられる。
「大体は薬を飲んだ後にもしかしたらこのまま死ぬんじゃないかって思って吐くから。」
「...そうなのか。そうなった心当たりはないのか?」
薬を飲めなくなってしまった理由...。
そんなの思い当たることは一つしかないよ。
でもそれを今ここで話したくなかった。
「ある、けど...話したくない。」
みんなにはまだ知られたくない。
だから今は話せない。
でもいずれ話さないといけない日が来る。
「全中が終わって、夏休みも終わって、学校が始まる頃には私の意思がどうであれ話さないといけない日が来るから...。だからその日まで、まって。」
「...分かった。」
「俺はその頃引退してると思うけど絶対話す時は俺も呼べ。いいな?」
「うん。」
いつか来るあの日まで時間はまだある。
それまでに私は心の整理がつくのだろうか。
いや、つかないだろう。
今までの経験上、あのことを話すといつも自分が自分でいられなくなっちゃうんだ。
だから今回はなるべく私でいられるように頑張ろう。
「ほら、もう寝ろって。いつまでも熱下がんねぇぞ。」
「うん。」
虹村さんに促され、起こしていた体を布団の中に入れる。
さつきが布団を掛けてくれた。
「と、俺らもそろそろ戻らないとな。」
ふと時計を見た虹村さんが赤司くんとさつきにそう言う。
そっか、休憩中に...。
『みんなと、もっと一緒にいたい。』
うん、居たい。
『言わないと伝わらないわよ?』
みんなはここに部活をしに来てる。無理なお願いで困らせたくない。
『そんなこと言ってたらまた大事なものがなくなっちゃうよ。』
それは、いや。私からもう何も奪わないで。
「じゃあ、由良ちゃんまた来るね!」
さつきの声が聞こえて夢心地だった意識が現実に戻ってきた。