第26章 風邪っぴき
「ったく、オメーの将来が心配だわ。」
虹村さんの大きな手が頭に乗る。
「...虹村、そろそろ練習が始まるんじゃないか?」
「え?...やべっ!監督、柏木のことよろしくお願いします。」
監督に言われて携帯で時間を確認した虹村さんは慌てて行ってしまった。
監督と二人きりになった。
「さて、ここではなんだし保健室に行くか。」
「保健室は開いてないんじゃないの?」
「さっき職員室でもらってきたんだ。」
そう言って監督が私の目の前にぶら下がるのはどこかの鍵。
「...保健室の鍵だ。」
「...おふとん。」
「行くか。」
監督が立ち上がり、私に手を差し出す。
その手を取って立ち上がった。
「...あつい。」
「使われていなかったからね。今付けよう。」
「うん。」
監督に促されて布団に潜りこんだ。
クーラーの付いた部屋はやがて涼しくなった。
「柏木、私は体育館に行ってくるが何かあったらこれで呼びなさい。」
これ、とは携帯。
携帯で監督を呼ぶ...?どうやって?
監督の番号なんて知らない。
そんなことを思っていたら、目の端に映る紙切れ。
それを見てみると、監督の番号が書かれていた。
置いた気配なんて感じなかったのにいつの間に置いたのだろうか。
それにしても、寒い。
温度を上げようかとも思ったが、勝手が分からないし切ってしまった。
きっとまたすぐ付けることになるだろうが寒いよりはいい。