第26章 風邪っぴき
「それで、話というのは君のことだね。」
監督が私の頭に手を置く。
「はい。...今日は家に誰もいなくなるのでとりあえず連れてきたんですが保健室は夏休みの間は空いてないっすよね。」
「そうだな。...ところで何故虹村が柏木と一緒なんだ?」
「あ、それは...昨日こいつを俺ん家に泊めたんで。」
「年頃の男女が同じ屋根の下で一晩過ごすとは....」
監督が意味の分からないことを言っている。
虹村さんは顔を赤らめて慌てているし、監督はそんな虹村さんを見て微笑んでいるし、本当に意味が分からない。
「...な、なに言ってんすか!」
「嘘はついていないだろう?」
「....虹村さん、どういう意味?」
私は顔が赤い虹村さんの服の裾を引っ張って、監督の言葉の意味を聞いた。
「あ?今ので分かんねぇとか鈍感だな...。あー、分かんねぇならいいんだ。」
「やだ。知りたい。」
そう私が言うと、困った顔をして首を傾げている。
私はそんな虹村さんの顔をじっと見つめていた。
「えっと、な。俺たち、もういい歳だろ?」
「いい歳ってなに?」
「監督も笑ってないで助けてくれよ。言い出しっぺはアンタだろ?」
「...仕方がないな。柏木、これだけは覚えておけ。男はみんな狼なんだ。」
「...おおかみ?」
「あぁ、そうだ。」
一体なんの話をしているのだろう。
監督の意味するものが分からない。
「監督、首傾げてますよ?分かってないんじゃないですか?」
「今はまだ分からなくてもいずれ分かるようになるさ。とりあえず、さっきの言葉をよく覚えておくように。いいね?」
未だよく分からないが頷いておく。