第26章 風邪っぴき
「悪ぃな。...でもつらくなったらすぐ言えよ。」
「うん。」
虹村さんにおぶられながら、いつもより高いところからの景色を眺める。
虹村家を出てから20分ぐらい経った。
虹村さんによると、もうすぐ学校に着くらしい。
今日虹村さんの家は誰も居なくなってしまうらしく、未だ熱の下がらない私を一人にしておくわけにもいかず、私は虹村さんと共に学校へ。
熱があると言っても、昨日みたいにすごく高いというわけでもない。
だからフラフラするということもなかったが、虹村さんに病人は素直におぶられとけ、と言われたので渋々虹村さんの背中にくっついている。
私は歩いてもよかった、というかむしろ歩きたかった。
そんなことを考えている内に学校に着いた。
「とりあえずオメーのこと監督に話しにいくか。今なら職員室に居んだろ。」
いつもは部室に直行するはずの虹村さんは、私を背負いながら職員室に向かう廊下を歩く。
「ちょっとだけ、涼しい...。」
「だなー。中入るとひんやりするな。」
「にじむらさんは、あったかい。」
「っ。だから汗かいてるからあんま寄るなって!」
虹村さんの首元に顔を埋めると軽く怒られた。
別にそんなの気にしないのに...。
虹村さんも体育館でいつも汗かいてるからそういうの気にしないんだと思ってた。
私の中の虹村さんのイメージがどんどん変わっていく気がした。
私は再び何か言われる覚悟で虹村さんの首元に顔を埋めた。