第26章 風邪っぴき
「おい、柏木!聞いてんのか?」
あるところでハッと夢から覚めたような感覚があった。
どんどんはっきりしていく。
さっきから私に声を掛けていたのは虹村さんだったと気づいた。
「...にじむらさん。おはよ...?」
「おはよ、じゃねぇよ。オメーいつからここにいた?」
ここ、とは部屋の外だろうか。
「...よく、分からない。けど、トイレから帰ってきた後からずっとここにいた、ような気がする...。」
「はぁ...。」
虹村さんが深いため息をつく。
「まぁ、説教はあとでするとして、体調はどうだ?」
「....。...良くなった。」
少し首を傾げてから答える。
虹村さんが私の言葉を聞いてどんな解釈をしたかは不明だが、私は前よりは良くなった、という意味で言ったつもりだ。
虹村さんは私の額に手を当てた。
「まだ熱あるな。熱いぞ?」
「...まだある?」
「あぁ。今日もオメーは部活行けないな。」
私の頭を撫でながら虹村さんは言った。
ふと虹村さんの顔を見ると、困ったような顔をしていた。
どうしたのだろう。
「とにかく、ここじゃなんだしオメーはもうちょっと俺の部屋で寝てろ。」
俺は顔を洗ってくるから、という言葉を残して虹村さんは一階に降りていってしまった。
残された私は、虹村さんの部屋のベッドにダイブ。
虹村さんがさっきまで寝ていた布団が見えた。
少しの好奇心が疼いて布団に近づく。