第26章 風邪っぴき
『そうです。不良さんは置いておいて、赤司さんも桃井さんも俺の知らないバスケ部の人たちもきっと由良のことを思ってます。俺が言うんだから間違いありません。』
「あいかわらずなんだから...。」
自信満々に言う万華鏡がおかしくて笑ってしまった。
『由良は辛い目に遭いすぎてるんですから、幸せになったって誰も文句は言いません。文句をいう奴がいたら俺がボコボコにしてあげます。』
「しあわせに、なっていいってさとりんにも言われたよ。でもね、しあわせって、なんだろうね?」
『俺の考える幸せは、』
トイレから出て電気を消す。
暗い廊下を歩いて階段を上って虹村さんの部屋の前まで行った。
不思議と暗闇に対する恐怖心は万華鏡のおかげでなくなっていたが、虹村さんが寝ている中部屋に入る勇気はなかったため、ドアの隣の壁に背中をくっつくて膝を抱えて座った。
「...わたし、今、しあわせ?」
自分自身に小さい声で問いかける。
「....。...わからない。」
私はまた口を開く。
問いの答えは出ない。
しあわせとはなんだろう。
「わたしの考えるしあわせは、」
今、何時...?
体がだるい。さむい。頭がボーっとする。
私は今まで何をしていた...?
自分の置かれている状況が分からず混乱していた。
気付いた時には廊下の壁にくっついて膝を抱えて座っていた。
どこでピピピと音が鳴っているのが聞こえる。
でもその音はすぐ止んでしまった。
次に聞こえたのはドアが音を立てて開く音。
その次は誰かの声。
「おい、こんなところで何してんだ!」
声の主は焦ったような顔をして私の肩を掴み揺さぶる。
私はそんな光景をスクリーン越しに見ているような錯覚に陥っていた。
今起こっていることが夢なのか現実なのか区別がついていなかった。