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トリップしちゃいました

第26章 風邪っぴき


「オメーさっきはすごかったなー。難関問題次々に解いていきやがって...。」


部屋に戻るため、また階段をゆっくり上りながら虹村さんが言う。


「...あんなの、誰にでも...。」


「出来ねぇよ。褒めてんだから素直に嬉しがってろ。」


階段途中で頭を撫でられた。


あんな問題、頭を使えば誰だって出来るのに。


私にしてみれば、あんな問題より人の気持ちの方がよっぽど難問な気がする。


虹村さんの言葉を素直に嬉しがって受け取ることは出来なかった。


考えたって仕方ないのにいつまでも考えて考えて前に進めない。私はいつだってそう。


階段を上りきって部屋のドアを開ける。


勢いをつけずに、そのまま重力に逆らわずベッドの上に倒れた。


「疲れたか?」


「...つかれた。」


「じゃあ、もう寝とけ。」


「...うん、ねる。」



目を閉じて数分後、再び目を開けた。


「寝れないのか?」


「...あんまりねむくない。」


「ま、その内眠くなるだろ。それまで横になってろ。」


「うん。」


大人しく虹村さんの指示に従う。


デジタル時計の数字が変わる頃、ドアが勢いよく開いた。


入ってきたのはタオルのようなものと謎の枕を持った虹村さんのお母さんだった。


「由良ちゃん、これ、首に巻いてみて。」


髪を上にあげて虹村さんのお母さんが首に巻いてくれる。


「なんかネギ臭くねぇか?」


「そりゃあネギがタオルの中に入ってるんですもの。」


「俺もこの部屋で寝るんだけど、臭くて寝れなかったらどうしてくれんだよ。」


「...そんなの気合で我慢すればいけるわよ。どうせ寝ちゃえば気にならないんだから。」


「それまでがつらいだろうが。」


「修造がぐちぐち文句言うから由良ちゃんが困ってるじゃない。」


「俺のせいかよ...。」


「あの、外した方がいいなら、外す。」


「病人がなに言ってんだよ。病人は大人しく寝てればいいの。」


起こした体を肩を押さえつけられてベッドに横にさせられる。


そして布団を上から掛けてくれた。
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