第26章 風邪っぴき
虹村さんが濡れた髪のまま部屋に15分ぐらいで戻ってきた。
「髪濡れてると、にじむらさんじゃないみたい。」
「あ?...あぁ、よく言われる。なんか幼く見えるって。」
「幼いかは知らないけどちがう人みたい。」
「そうか?」
虹村さんは肩に掛けたタオルで髪をガシガシと拭く。
「オメーも風呂入るか?...でも体温高いなら入んない方がいいのか...?」
虹村さんが自問自答しながら私の額に手を当てる。
「うーん、やっぱ高いなぁ。」
私は悩む虹村さんを見ていた。
「オメーはどうする?入りたい?」
「どっちでもいい。」
汗はかいてるけど、でもそんな不快ってほどでもないし着替えも持ってきてない。
お風呂に入るのが特別好きだとかそういうのもないし正直どうでもよかった。
「まぁいいや。おふくろがご飯出来たっていうから下行こうぜ。」
「ごはん?」
「オメーのもあるから。さっきの...はちみつ、大根?とホットミルク。」
「行く。」
ベッドから降りて自分の足でいざ立ってみると結構フラフラした。
そこを虹村さんに支えられる。
「おんぶ、してった方がいい?」
「...歩く。」
目線を合わせられ言われたが、ちょっと意地を張った。
「気をつけろよ。」
階段も転ばないように一段一段虹村さんに手を引かれながら丁寧に降りた。
ゆっくりと降りて廊下を歩き、リビングに入る。
テーブルには料理が並び、テレビの前には修也くんと花ちゃんが楽しそうに番組を見ていて、それでいて涼しい。
快適な部屋だなと思った。
「ここ、涼しいだろ?ここにしかないからな、クーラー。」
「ふーん。」
「ほら、オメーはふらついてんだから早く座ろうぜ。」
「うん。」
料理が並ぶテーブル、虹村さんの隣に座らせられた。