第26章 風邪っぴき
さつきと赤司くんと別れて、虹村さんにおんぶされて虹村さんの家に向かう。
「きつくねぇか?きつくなったらすぐ言うんだぞー」
「...うん。平気。」
虹村さんに気遣われてちょっとだけ嬉しくなった。
暇だったから、虹村さんの首元に顔を埋めてみる。
今日は色んな人にこうやって遊んだ気がするなぁ。
「おい何してんだよ。」
「...にじむらさん、あったかい。」
「そうか?...でも今汗かいてるからあんまくっつかない方がいいぞ。」
「うん。」
虹村さんの言う通り離れる。
「にじむらさん。」
「なんだ?」
「にじむらさんて、背高いんだね。いつもと全然見てる景色がちがう。」
「オメーがちっちゃいだけだろ。」
「そんなに小さくない...。」
「それに軽いし。やっぱもっと飯食おうぜ。」
「...やだ。」
「やだって...。体調悪いうちは強制はしねぇけど治ったら強制してやるからな。」
「....。」
...だったらずっと具合悪いまんまがいい。
そうすれば、にじむらさんはずっとやさしいまま。
「柏木?」
虹村さんが私の名前を呼ぶ。
「...なに。」
「いきなり黙んなよ。体調悪くなったんかと思って焦ったわ。」
「...うん。」
急に寒気がして、体を縮こませる。
「さむい。」
「あ?今暑いんだけど。オメーは寒いのか?」
「一瞬だけ、さむかった。」
「もうちょっとで家着くからそれまで我慢な。」
「うん。」
虹村さんの歩くスピードが心なしか速くなったような気がする。
家まで急いでくれてるのかな...。