第26章 風邪っぴき
「...わりぃ。...じゃあ今日はオメー、この家に一人って可能性の方が大きいわけだ。俺も病人を放っておくほど鬼じゃねぇから今日は俺ん家来るか?」
虹村さんの言っていることを理解するまで少し時間が掛かった。
「おふくろもオメーなら歓迎するし。な?」
「...うん、行く。」
虹村さんにぎゅっと抱き着く。
そんな私に虹村さんは頭を撫でてくれた。
「よし、そうと決まれば、だ。電話してくるからちょっと頼むわ、赤司、桃井。」
「分かりました。」
「由良ちゃん、おいで~」
さつきが手を広げてきたから、虹村さんから離れて今度はさつきに抱き着く。
「なんだか今日の由良ちゃん、色んな意味で可愛い...!ね、赤司くん?」
「...あぁ。」
さつきに頭を撫でられていると、廊下の方で電話していた虹村さんが戻ってきた。
「どうでしたか、虹村さん?」
「ん?柏木ならすぐ連れてこいってさ。...どんだけ可愛がってんだか。」
「良かったね、由良ちゃん。」
「うん。」
「じゃあ早速行くか。赤司は桃井を送ってやれよ。」
「...そのつもりです。」
「そっか。」
虹村さんが私をおぶって玄関まで連れて行く。
「柏木、家の鍵どこ?」
「ん、知らない。」
「嘘つくんじゃねぇ...。」
「...私の部屋の机の引き出しのどこか。」
「俺が探してきます。」
「私も。」
赤司くんとさつきが私の部屋に入る。
「オメーはあんまり他の奴困らせるんじゃないの。」
虹村さんは私を降ろさずに玄関の段差のところに座った。
「...鍵は閉めなくてもいつも大丈夫だもん。」
「いつか泥棒に入られるぞ...。」
「...この家には盗られて困るもの、ないから平気。」
「オメーが平気でも俺らが心配なの。だからこれからはちゃんと鍵閉めろよ。」
「うん。」
鍵が見つかったようで赤司くんとさつきが部屋から出てきた。
鍵をしっかり掛けて、それを虹村さんが預かるそうだ。
マンションの下まで一緒に降りて、そこで別れる。
「じゃ、気をつけて帰れよ。また明日な。」
「虹村さんたちこそお気をつけて。また明日。」
「じゃあね、由良ちゃん。」