第26章 風邪っぴき
「ごちそうさまでした。」
手を合わせる。
「食欲がないと言ってませんでしたっけ?」
「だってこのお粥の匂い嗅いだら食欲湧いてきたんだもの。全部食べちゃった。」
空のお皿を黒子くんに渡す。
「では、僕はこれを片づけてくるので薬を飲んでください。」
「買ってきてくれてありがとう。」
「いいえ。」
黒子くんが出て行くのを見届けた後、袋に入ったゼリーと薬の箱を取り出して布団の上に置く。
あ。
「スプーン...。」
部屋を出て歩いてリビングに行く。
「柏木か。どうした?」
リビングに続くドアを開けてすぐ赤司くんが声を掛けてきた。
「スプーンが欲しくて。」
「今持っていくから君は部屋に戻っていろ。」
「うん。」
赤司くんに言われて今来た道を引き返して部屋に戻る。
スプーンを受け取って、ゼリーを使って薬を飲んで布団に入る。
布団に入ってしばらくすると、部屋のドアが開いて袋を抱えた緑間くんが入ってきた。
「柏木、枕をこれに変えるのだよ。」
「え?」
「今日のお前のラッキーアイテム、羽毛の枕だ。」
え。まさか、買ってきたの?
...緑間くんて変わってるのは知ってるけど、色々ぶっ飛んでるなぁ。
「私のためにありがとう。」
とりあえずお礼は言っておく。
「べ、別にお前のためではないのだよ。早く元気になってもらわないと部に支障が出るからだ。」
照れちゃって...。可愛いところもあるものねぇ。
「じゃあ、このラッキーアイテムで早く治して部活に出られるように頑張るね。ありがとう。」
私がそう言うと、耳が少し赤い緑間くんは部屋を出て行った。
数分後、急に眠気がきて布団に倒れるように意識を失った。