第26章 風邪っぴき
蓮花side
「ん...。」
「...起きました?」
「...ん。」
何度か瞬きしてぼんやりした風景をはっきりさせる。
あれ?今私誰と話して...
「きゃっ、ひゃうあぁ!」
「っ!」
すぐに両手で口を押さえる。
驚きすぎて自分でもよく分からない声を上げてしまった...。
「く、黒子くんっ?どうしてここに?」
「あなたは...蓮花さん、ですか?」
「え、えぇ。よく分かったわね?」
「口調でなんとなく...。ここにいる理由は、柏木さんのお見舞いです。」
「でも今日は部活じゃ...。」
「半日だけなんです。」
「そう...。」
黒子くんから事情を聞いて状況を把握出来た。
何はともあれ泥棒じゃなくて良かった。
黒子くんが目の前にいるっていうのも心臓に悪いわよね。
「ところで、薬や食事を摂ったかわかりますか?さっきまで起きていた由良さんに聞いたんですが、分からないと言っていたので。」
「薬も食事も摂ってないよ。私が最初に朝起きたの。」
「そうなんですね。では、体温計買ってきたので測ってもらえますか?僕は後ろ向いてるので測り終わったら教えて下さい。」
そう言って黒子くんは本当に後ろを向いた。
私はパジャマのボタンを二、三個開けて、体温計を脇に挟んだ。
ピピッ
一分ぐらいで音が鳴って、体温計を取って見てみた。
「38.2℃...。」
「高いですね。」
体温計の画面に表示された数字を読み上げた後、その辺に体温計をポイッと放り、パジャマのボタンを閉める。
「そうね。もうこっち向いてもいいよ。」
丁度ボタンを閉め終わったタイミングで黒子くんに声を掛けた。