第26章 風邪っぴき
由良side
ピーンポーン
遠くの方で音が鳴っている。
暗闇の中、どこからか聞こえる音。
ピーンポーン
再び鳴る。
今度はさっきよりはっきりと。
ゆっくり目を開けた。
何度か瞬きして自分がどんな状態でここがどこなのか把握する。
「おーい!いないんスかー?」
ピーンポーン
さっきから鳴る音はどうやらインターホンで今度は声まで聞こえる。
なんだか聞いたことのあるような気がするけど、誰だったかは思い出せず。
重たい体を起こしてベッドから降りる。
私の部屋じゃない...。
部屋から出てプレートを確認する。
蓮花の部屋と書いてあった。
ピーンポーン
「おーい!柏木っちー?返事してー!」
未だ鳴るインターホンと誰かの声に吸い寄せられるようにトボトボおぼつかない足で玄関に向かう。
玄関まで無事たどり着いて、ドアを開ける。
「あ、やっと開いたっス!柏木っち、お見舞い来たっスよ!」
「黄瀬、うるさいぞ。」
「病人の前ですよ。」
「そうだよ~、黄瀬ちんうるさい。」
「由良ちゃん、お見舞い来たよ!」
「柏木、体調はどうだ?」
そこには見慣れた人たちがいた。
「...あがる?」
「あぁ、そうさせてもらうよ。」
私の家にみんなを入れるのはこれが初めてだけど、部屋を見られて恥ずかしいとかはなくて、むしろ今は早く座りたいという気持ちしかなかった。
フラフラしながらさっきまで居た部屋ではなく、今度は自分の部屋に入る。
由良とみさきなでしこの部屋に。