第25章 rainy day
由良side
午後の練習も終わって体育館内には自主練する人だけが残った。
全中予選の試合が近いからだろうか、いつもより人が多い気がする。
私は色々な片づけを済ませて帰る準備をする。
準備も終わり、さあ帰ろうという時に声を掛けられた。
「柏木。」
名前を呼ばれて振り向くと、虹村さんが立っていた。
あんまり会いたくなかったのに。
「...何ですか?」
「あのさ、今日ってこの後暇?」
「...暇。」
少し返答に迷ったが正直に答える。
「そっか。実はおふくろがオメーに会いたがってんだ。柏木さえ良ければ今日会ってやってくれねぇか?」
虹村さんのお母さんに...。
「...いいよ。」
「じゃあ1時間ぐらい待っててくれ。」
「うん。」
虹村さんを待つため、制服で体育館の端っこに座って自主練する人たちを見ていた。
試合が近い分、みんなもすごく真剣にやっている。
もちろん虹村さんも。
試合は二年生中心に使われるのに。出られないかもしれないのに。
どうしてそこまで頑張るんだろう。
分からない。
私も、あの頃はまだ頑張れたのに今はもう頑張れない。その気力がない。
だからかな、こうやって真剣に頑張ってる人たちを見ると心がざわつく。
ここに居たくない。
でも外は雨が降ってるから出られないし、廊下は暗いし湿気でじめじめしてるしでここにいるしかなかった。