第25章 rainy day
虹村side
「何も知らない人がお母さんのこと、悪く言わないで!」
柏木に手を掴まれ、何か言いたいことでもあるのかと言おうと振り返りざまに体育館中に響く声で言われた。
その言葉で体育館で練習していた奴らの声が止み、一斉にこっちを見た。
「どうしてみんな同じことばっかり言うの!お母さんは自分のことでいっぱいなの!だから何も教わってないの!何度も何度も同じこと言わせないでよ!」
柏木はそこまで叫ぶと、急に俺を見てはっとした表情になり何かに怯えるように膝をついて頭を抱え込んだ。
「...あ...ちが、う。わたしが、わたしが、よわいから。なにもしらなかったから。ぜんぶ、わたしのせいだ。...ごめんなさい。ごめんなさい。」
俺は頭を押さえて泣きじゃくる柏木を前に、名前を呼んだり背中を擦ったりしてみたが柏木が落ち着くことはない。
柏木と俺の周りにはいつの間にか人だかりができていて、赤司や黒子、桃井も俺と同じように柏木の名前を呼ぶが状況は変わらない。
その内、監督とコーチが体育館に来て監督はすぐに状況を把握したらしく駆け寄ってきた。
監督が柏木を抱き寄せた後、柏木は何かを呟いてふっと意識を失ったようだった。
「虹村、あとで何があったか話してくれないか?」
「...はい。」
「私がこの子を保健室に連れていくから虹村たちは部活を始めなさい。」
「...柏木のこと、よろしくお願いします。」
意識がない柏木を抱いて監督が保健室に連れて行くため体育館を出るまで俺はそこから動けなかった。
虹村side終わり