第24章 休日
「...前に虹村さんに家族が大事じゃないのかと聞かれたことがあります。...正直分かりません。あの人は私にひどいことをたくさんしました。あの頃は好きな気持ちの方が強くて嫌いな気持ちが弱かった。今はすごく嫌いです。好きだとは言えません。」
「...君は大変つらい経験をしてきたんだね。何故私に話してくれたんだい?」
「...分かりません。自然に口が動いていたから。虹村さんには...」
「言わないよ。修造には言わない。...約束しよう。」
私の目をしっかりと見て言った。
この人ならきっと大丈夫だろうと思う。
今までいっぱい裏切られてきたせいかそういうことは直感で分かってしまう。
そんな自分がちょっと怖い。
「...そろそろ帰ります。花、持ってきたのでよかったら飾って下さい。」
「あぁ。今日は私の話も聞いてくれてありがとう。修造以外の人に聞いてもらうのもいいものだな。またな。」
花を花瓶のそばに置いて部屋から出ようとしたその時、ドアが開いて廊下から入ってきた人と目が合った。
その人は私を見ると、眉間にしわを寄せて段々と鬼のような顔になっていった。
「...修造、おはよう。」
「おはよう。...で?なんでオメーがここにいるんだ?」
虹村さんが私を睨む。
その視線から逃れたくて目を逸らして虹村さんのお父さんに視線を向けて口を開いた。
「...話を...聞きに。」
「話?なんの?」
「...修造。そんな怖い顔をするな。お嬢さんが怖がっているじゃないか。」
「親父...。」
虹村さんのお父さんの一声でその場は治まった。
「まぁ修造は落ち着いて座りなさい。」
「君は、帰るんだよね。またな。」
「また、ね。」
ドアのところまで着て振り返って手を振る。
そしてドアから廊下に出た。
まさか虹村さんに遭遇するとは思わなかった。
びっくりした...。
深呼吸してから病院を出て、そろそろいい頃合いになってきたからさつきとの約束の場所に向かうことにした。