第23章 合宿
「そっか。...あ、あと、あいつにテスト真面目にやれって言っとけ。」
「テスト?」
「あいつ、頭いい癖にテストで散々手抜きやがって。そういや、オメーらって頭いい奴もよくない奴も普通にいんの?」
「うん。一番頭悪いのは多分蓮花だよ。」
「マジか。で、一番いいのは?」
「由良でしょ。ていうか由良は頭いいっていうかあれはもう頭いいっていう次元じゃないよ。」
「どういうことだ?」
「一度見たものは一瞬で記憶しちゃうんだもん。すごいよ。」
「あ。」
虹村さんは何か思い当たることがあるのか私から目を逸らし何かを思い出すように遠くを見つめた。
「でさ、やっぱり手抜いちゃうの?テスト。」
「そうなんだよ。なんでそんな能力持ってんのにやらねぇんだろうな。」
「由良が前に言ってたよ。...意味がないからだって。頑張っても意味がないから頑張らないんだって。」
「意味がないってなんだよ。ふざけんなよ。」
虹村さんの眉間にしわが寄っている。
これはちょっとマズイ、かも。
「あのね!虹村さん、別にふざけてるわけじゃないの。その時の由良ね、すごく寂しそうな顔してたの。私もよく分からないけど絶対何かあると思う!だからあの、怒らないであげて?」
「わりぃ、俺もちょっと熱くなっちまった。」
「虹村さんのそのすぐ熱くなる性格ってなんかいいよね。私そういう人好きだなぁ。一生懸命って感じがする。」
「そ、そうか?初めてそんなこと言われた。」
虹村さんが照れている。
虹村さんのことは知ってたけど、案外可愛いかも。
ギャップ萌えってやつ?
熱血系ってあんま好きじゃなかったけどいいかもね。
「虹村さん、今日は奢ってくれてありがとうございました!気を付けて帰って下さいね。」
マンションの前で頭を下げる。
「あぁ。こっちこそ、色々と教えてくれてサンキューな。明日は部活休みだからしっかり体休めろよ。じゃな!」
「はーい。」
虹村さんを見送ってからマンションの中に入る。
ごめんね、虹村さん。また嘘ついちゃった。
本当は由良がテストを頑張らない理由知ってるんだ。
でもその理由を話すのは由良だから。