第23章 合宿
バスが学校に着いた。
寝ていた人たちが眠そうに目を擦りながらも起きている中、私はまだ隣で寝息を立てるさつきを起こせずにいた。
揺すっても起きず、さつきを揺する自分の手が震え始めたことに気づいて歯を食いしばって手を握り締めて耐える。
さつきはあの人とは、違う...。
今だって寝息立ててるし、大丈夫だよ。
「なんだ?さつきはまだ寝てんのか。早く起こしてやれよ柏木。」
だったら青峰くんが起こせばいいのにと思いつつそれを口にすることは出来なかった。
続々と後ろの方の席の人たちがバスを降りていくのを見る。
段々人がバスの中からいなくなってきて、そのせいで焦りを感じて呼吸が苦しくなってくる。
そんな中肩を掴まれた。
「おい、大丈夫か?なんか変だけど。」
声を掛けられてもいつもなら誰か分かるのにちょっとしたパニックに陥っていて返事が出来ない。
虹村side
バスから降りようとした時、まだ寝ている桃井が最初に目に入り、次に桃井の隣で手を握りしめながら俯く柏木が目に入って何かが変で声を掛けた。
だが返事はなく、また声を掛けようと口を開きかけたら赤司に声を掛けられた。
「虹村さん、そのまま柏木をバスから降ろして下さい。」
「お、おう。分かった。」
俺は反射的に返事をしたが、なんとなく赤司の言わんとすることが分かって柏木に再び声を掛けた。
「柏木、バスを降りるからとりあえず立て。」
「虹村さん、恐らく柏木には聞こえてないので多少強引に降ろしても大丈夫かと。」
「そうか?」
赤司にそう言われ、多少強引にバスから降ろすため柏木の脇に手を差し入れ持ち上げてそのままバスから降ろした。
柏木を地面に降ろしたが無反応で声を掛けても俯いているだけでしびれを切らした俺は割と大きい声を出した。
でもそれが悪かったのかもしれない。
柏木は一瞬体をビクつかせた後、自分の首に手を当てて苦しみだした。
俺自身もパニックになりかけ、周りの奴らもどうすればいいか分からないといった顔でオロオロするばかりで役に立ちそうにない。