第23章 合宿
頬には涙が伝い、手はスカートの上で爪が食い込むほど強く握りしめていたみたいでちょっと痛い。
眠ってただけなのに疲れた...。
背もたれにもたれて窓の方を見ようと思ったがさつきがいたから真っすぐ前を向くことにした。
頬に伝った涙を拭うことはしなかった。
なんだか拭っても拭っても出てきそうな気がして。
昔のことなんか思い出してもいいことないのに、なんで夢に見ちゃったんだろう。
もう過ぎたことなんだから変えようがないし忘れるしかない。
頭では理解してる。でも心が私の気持ちがそれを許さない。
考えれば考えるほど感情がぐちゃぐちゃになって最終的には考えるのを止めてしまう。
考えたってその先には何もないことを知ってるからだと思う。
考えたって仕方ないんだから現実を受け止めて受け入れるしかない。
私はその段階まで行ってなくて考えるところで止まっている。
だからつらい。
分かってるけど、でも出来ない。
『ちょっと考えるの止めたら?』
「みさきなでしこ...。」
『そんなに考えてたら体も頭も休まらないよ?』
「うん。分かってる。」
『分かってないよ。由良って休憩するの下手くそだしそれを自覚しないからダメなんだよ。』
「...うるさい!」
起きていた人たち全員が私の方を向いた。
私の席の斜め前に座っていた監督もこっちを見る。
「...あ、えっと...。ごめんなさい。大きい声出して。」
私は監督や通路を挟んだ席にいる赤司くん、その後ろに座る緑間くんに謝った。
まさか頭に響く声と会話してました、なんて言えず俯いた。
幸いなことにみんなすぐ興味を失ったみたいで私に何か質問してくるとかそう言ったことはなかったから助かった。
深呼吸して気持ちを落ち着かせ、今度は眠っているさつきの方を向いた。
静かな寝息を立てて気持ちよさそうに寝ている。
そういえば私、さつきに言いたいことあったんだ...。
何だったかな。
まあ、いっか。
さっきまでのはなんだったんだというくらい今は落ち着いて窓の外を見る。