第23章 合宿
バスが出発して間もなく眠気がやってきた。
バスの揺れが丁度良く私の眠気を誘う。
隣のさつきを見ると窓の外を見ている。
私はそんなさつきに言いたいことがあったはずだけど、眠気に負けて目を閉じた。
『つらいなら私があなたになってあげる。』
「だれ?」
『私はあなた。』
「わたし?」
『そう。私はあなた。あなたは私。』
「たすけて。*****。こわい。」
『大丈夫だよ。私があなたを守ってあげるから。だから、泣かないで。』
この会話、知ってる...。
私の中に初めて私とは違う人格が生まれた日だ。
私はあの日、お母さんに首を絞められた。
初めてお母さんを怖いと思った。
本能がこの人の傍にいたら命が危ないと告げていた。
でも私にはお母さんの傍を離れるなんて考えはなかった。
もう好きだという気持ちもなく、ただ怖い、とか嫌い、とかそんなネガティブな気持ちしかなくても一緒にいることしか出来なかった。
心のどこかで期待していたのかもしれない。
もしかしたら夢だったんじゃないかって。
でも夢じゃないって分かった時はちょっと発狂しそうになった。
許せない、憎い、そんな思いが頭を駆け巡って興奮状態になると意識が飛んで人格が交代する。
そんな感じでずっとお母さんと生活してきた。
きっと私の人格が入れ替わってるなんて気づいてなかっただろう。
今は自分の意志で交代することが出来るようになったけど、お母さんのことを考えると何とも言えない気分になる。
考えるほどに分からなくなってくる。
怖くて憎くて*したいほど嫌いなのに、心のどこかで好きな気持ちを捨てきれなくて期待してる自分がいる。
そんな自分も...大嫌い。
もういっそ死んでしまったほうが....
そこで目を覚ます。