第23章 合宿
髪の毛を完全に乾かしきれていないが、最後まで乾かすのが面倒で脱衣所を出る。
廊下は少しひんやりしていて涼しい。
頭にタオルを掛けた状態でポタポタ水滴をたらしながら歩いた。
百人一首の豪華景品って何だろうな。
私の欲しいものもくれるのかな。
百人一首なんて二、三年前にやったきりだけど、楽しかったなぁ。
あんな何も考えずに楽しめるあれは割と好きだった。
ただ、どんな句があったとかは全く覚えていなくて、でも問題がないことを知っているからあまり心配はしていない。
「柏木さん。」
不意に声を掛けられてそちらを向いた。
「...っテツヤ。」
「柏木さんが驚くなんて珍しいですね。何か考え事でもしていたんですか?」
「うん。...百人一首大会、楽しそうだなぁって。」
とても素直な気持ちが出た。
この合宿に来てから本心を素直に表現するなんて監督の前以外なくて自分でもちょっと驚いた。
「なになに~、何の話~?」
「...紫原くん、と赤司くんと緑間くん。百人一首大会が楽しみだという話をしていたんです。」
「へ~」
「柏木さんは百人一首出来るんですか?」
「...出来るかどうかは知らないけど、単純に楽しみなだけ。」
「そうでしたか。」
「テツヤたちは今からお風呂入るの?」
「はい。柏木さんはもう入ったんですね。髪の毛早く乾かした方がいいですよ。風邪引きますし。」
テツヤが私の水滴の垂れた髪の毛を見て言う。
「...髪乾かすの面倒くさかった。」
「柏木、ちょっとそこに座れ。」
今まで黙っていた赤司くんがベンチを指差して座るよう言った。
私は大人しく座った。