第23章 合宿
自分を褒めるなんて。
『由良ちゃんは頑張り屋さんやね。自分を褒めたってもええんちゃう?』
昔言われた言葉が突然頭に響いた。
監督ってどうしてあんなに、似てるのかな。
外見も年齢も喋り方も全然違うのにね。
不思議だなぁ。
いつまでも監督の部屋の前にいるのも嫌だったからとりあえず歩いた。
部屋に戻ろうかな。
行くところもないしと思い方向転換する。
ふと窓の方を見た。
空はちょっとのオレンジ色とまだ広い面積を占める青色とのコントラストが綺麗だ。
「柏木?」
そこでぼーっとしていると、名前を呼ばれてそっちを向いた。
「げ。」
つい本人を目の前にしてそんな声が出てしまった。
「げってなんだよ、げって。」
「つい...。」
「ついってお前なぁ...。」
虹村さんは呆れたようにため息をついた。
虹村さんはいつも一緒にいる三年の先輩と一緒だった。
いつも私に話しかける時は一人なのに、珍しいと思ってしまった。
「ま、いいや。オメーこんなとこで何してんだ?女子部屋あっちだろ。」
「....。...虹村さんには関係ない。」
監督の部屋に行っていたと言おうとして止めた。
この人には怒られたばかりだったから言えなかった。
「虹村嫌われてやんの。」
「うるせ。」
名前を知らない先輩が茶化すと、虹村さんは不機嫌そうにそっぽを向いてしまった。
拗ねているようでちょっとかわいい気もする。
「あ、そうだ。」
「....?」
「今日の夜、百人一首大会やることになったからさ、風呂のあと大部屋に集合な。桃井にも伝えといて。」
「百人一首、大会...?」
「チーム戦で優秀者と5位までに入ったとこに監督から豪華景品が贈られるんだと。」
「ふーん。」
「興味なさそうだなおい...。ちゃんと来いよ。じゃ、話はそれだけだから。」
そう言って虹村さんと名無し先輩は行ってしまった。