第23章 合宿
二人で監督の部屋に入ると、すでに監督とコーチが待っていて早く座るよう促された。
テーブルになんか、ある。
小さい二つのホワイトボードと赤と青のマグネット。
「柏木、早速だがいいか?」
「...うん、いいよ。」
私が頷くと、監督がテーブルの上にあったホワイトボードとマグネットを取ってホワイトボードに何か描き始めた。
監督が描いたもの、それはコートだった。
嗚呼、そういうことか。
納得した。
今回は紙じゃなくてこれを使うのか。
「始めていいぞ。」
マグネットを監督から受け取り最初の位置に置く。
「タイマー...。」
「うん?」
「時間はかるの、欲しい。」
「時計じゃダメか?」
監督が壁の時計を差して言う。
「嫌。」
「じゃあ、携帯は?」
赤司くんが携帯を私に渡してきた。
本当はタイマーが良かったんだけど、携帯にもタイマー機能がついていることを思い出した。
「うん、いい。」
「はい。」
赤司くんから携帯を受け取ってタイマー機能を使って時間の設定をする。
「始めるよ。」
「あぁ。」
スタートボタンを押してからマグネットを動かし始めた。
両方のホワイトボードのマグネットを時間を見て動かしていく。
さっき見ていたのと同じように動かす。
しばらくしてアラームが鳴った。
「終わった、よ。」
顔を上げてホワイトボードに釘付けになっていた三人の顔を見回した。
「ご苦労だったな。」
「お疲れさま。」
「ううん、私は、見て覚えただけだから。」
労いの言葉をかけられたがその言葉を素直に受け取ることが出来なかった。
「柏木のやったことは無駄にはならんよ。君は頑張った。少しは自分を褒めてやってもいいんじゃないか?」
「...気が、向いたらね。」
立ち上がって部屋を出ていく。