第4章 多重人格の私
「柏木!」
はっきり名前を呼ばれていると感じた瞬間にはっと目を開ける。
「おい、大丈夫か?」
え?
なんのこと?
「うなされてたみたいだが平気か?」
うなされてた....?
「....疲れた。」
なぜか心臓のバクバクが止まらなくて、息するのも苦しくて、汗もいっぱいかいていた。
「そっか、疲れたか。」
「....虹村さん、手かして.....ください。」
虹村さんが片手を差し出す。
その手を頬に当てる。
「....あったかい。」
「お、おまっ、なにして....?!」
虹村さんの顔が赤い気がする。
気のせいじゃないよね....?
「顔、赤い....。ど...した....の?」
「どうしたのじゃねぇよ。オメーのせいだろうが。」
私のせい?
なんかしたかな?
「....ぎゅってしていい?」
「いや、さすがにそれは....。」
断られて傷つくほどのものでもないのにすごく傷ついた。
「....お願い....。」
手の震えが止まらず、虹村さんに手を伸ばす。
「はぁ....わーったよ。」
ため息をついたが、ぎゅっとするのを許してくれた。
「....どうした?怖い夢でも見たか?」
「.....怖かった。」
「話してみ?気持ちちょっとは軽くなるかもしんねーから。」
なぜかついさっきまで怖い人だと思っていたのに、顔の割に優しい言葉だったからか、話す気になった。
「....暗かった。....走っても走っても暗いとこから抜け出せなくて怖かった。」
「暗いとこは怖いのか?」
「....怖い。」
「ん、分かった。」
優しくしてくれて、頭も撫でてくれて、虹村さんが別人に見えた。