第23章 合宿
「虹村さん、運んでくれてありがとう。」
席に着く前に虹村さんにお礼を言った。
「あぁ...。」
短い返事でこっちを向いてくれなかった。
怒ってる...?
朝のこと、謝ってないからかな。
それとも...
思い当たることがありすぎて悩む。
「柏木、早く席に着け。」
突っ立っていると赤司くんから早く席に着くよう促された。
なんだか赤司くんも怒ってはいないようだけど、機嫌が悪そう。
私は何かしてしまったんだろうか。
気まずい雰囲気の中食事は終わり、食器の片づけをさつきと一緒にした。
部屋に戻る途中虹村さんに呼ばれたからさつきと別れて虹村さんに着いていった。
着いた先は自販機のところ。
話があるそうだがいい話ではないのは虹村さんの顔で分かる。
「オメーさぁ、夜寝ないで何やってんだよ。」
低い声が静かな廊下に響いた。
「...別に、何も。」
「何もやってないんなら寝ろよ。寝ねぇから具合悪くなんだろ。」
そんなこと、分かってる。
「そうだね。今夜はちゃんと寝る。」
無理だろうけど。
「寝るのは当たり前だ。オメーが具合悪くなってるから桃井もほんとは二人でやるはずの仕事を一人でこなしてるし監督にも迷惑かけてることを自覚しろ。」
「...うん。」
「午後はちゃんと練習出ろよ。」
「うん。」
虹村さんは言いたいことを言い終わって行ってしまった。
「寝るのは、当たり前...か。」
一人そこに残された私は壁に寄りかかって床に座り込む。
朝少しは寝られたが体は疲れが取れていなくてだるさが残っている。
そこから動いて部屋に戻るのも面倒で若干暑い廊下に居続けた。
ぼーっとしていると寝てしまいそうだったから歌でも歌おうと口を開いた。