第23章 合宿
戻ろう、あそこに。
引き返して監督の部屋に戻る。
監督の部屋は私が電気も点けっぱなしでクーラーもつけっぱなしで部屋を出たから寒いほど冷えていた。
でもクーラーの温度設定なんてやったこともないし分からないからそのままにしておいた。
代わりに部屋の扉は開けて窓も開けた。
こうすれば少しはこの部屋の寒さもやわらぐと思う。
特にすることもなく、寝るのも嫌だったから無断で監督のカバンの中を漁ってみた。
すると、監督が読んでいた本。
『犬がバスケで世界征服』っていうタイトルの、あらすじを読んでもいまいちどんな系統の本なのか見当もつかない本。
それと、バスケの本。
暇だったからその2冊を読むことにした。
よく分からない本とバスケの本を両方畳の上に置いて私は本の前に正座してから表紙を開く。
内容などはあまり気にせず数秒上から眺めるようにして本のページをめくっていく。
それを繰り返すうち、結構なページをめくっていたから両方の本のページ数は半分を切っていた。
そのうち監督も帰ってきて、扉も窓も開けっぱなしにして本を2冊同時に読む私に昼食の時間を知らせに来た。
「勝手に私のカバンを漁ったね。」
「...怒る?」
「あれくらいで怒るほど私の器は小さくない。」
「ごめんなさい。」
「謝る必要はない。面白かったかね?」
「...まだ全部読んでないからわからない。」
「私もあの本はまだ読み終わってないんだ。貸してあげたいがもう少し待ってくれないか?」
「...私は暇だから読んでただけだしいい。」
「そうか?」
そんな話をしているうちに食堂に着いた。
そういえば...
「ねぇ。」
「なんだい?」
「私...朝、食べる前にここで寝た?」
「そうだが?それで虹村が私の部屋まで君を運んだんだ。」
「へぇ。」
「虹村にはお礼を言っておきなさい。あんな顔をしてあいつは案外面倒見のいい奴でな。」
「...知ってる。」
虹村さんが面倒見が良くて優しいのなんて、知ってるよ...。