第23章 合宿
「ペナルティを受けられる状態ではないね。」
監督が座り込んだ私に目線を合わせてそう言った。
「今の君に必要なのは休養だ。」
「...休養...。」
「そうだ。...さあ、私の部屋に行こう。」
私を立ち上がらせて支えながら連れていってくれた。
監督の部屋は昨日と同じで涼しかった。
「私は真田さんに柏木のこと伝えてくるから君はここでゆっくりしているといい。」
私が頷くと、監督は部屋を出て行った。
どうして監督は私に優しくしてくれるんだろう...。
私に優しくしたってメリットなんて何もないのに。
「...馬鹿みたい。」
自嘲したように笑った。
しばらくして監督が部屋に戻ってきた。
戻ってきた監督は私のために布団を敷いてくれた。
「朝食の時間までまだ時間はあるから寝ているといい。」
「...眠くないからいい。」
さっきコーヒーを飲んだせいで眠気はなくなっていた。
「眠くなくても横になるだけで体の疲れは大分とれるはずだ。」
そう言われたから仕方なく布団に寝転がった。
「君のその疲れの原因は恐らく睡眠不足だ。昨日今日とあまり眠れていないのか?」
「...うん。」
どうしてかは分からないけどこの人には嘘をつけない。
口から出まかせが出て来ない。
「何故眠れていないのか自分で原因は分かっているのか?」
「...うん。」
なんとなく監督を見たくなくて目を閉じた。
「眠いなら寝ていていい。」
私が目を閉じて勘違いしたのか眠るよう促してくる。
「...眠くない。眠くなんか、ないよ。」
「そうか...。ところで、原因はなんなんだ?」
「....。...色んなものが、怖い...。」
ただ、怖い。
私の眠れない原因はそれだけだった。