第23章 合宿
「君の人生はまだまだたくさんある。これから楽しいこともつらいことも待っているだろう。君の知る世界はまだ狭い。今はつらいだろうがこの先つらいばかりではない。君にはぜひ生きる楽しみというものを知ってもらいたいものだね。」
生きる楽しみ、ね...。
「...どの人もおんなじことばっかり言って馬鹿みたい。」
「ははっ。」
「...私の時間、ずっと止まってるの。進んでるのは外だけで、私はいつまでもあの日に閉じ込められたまま。」
泣きたくないのに涙が出てくる。
「大丈夫。君は一人ではない。君を思う人は周りにたくさんいる。いつかそこから連れ出してくれる人が現れるさ。焦ることはない。言っただろう?君にはまだ時間がたっぷりあると。」
「...なんで、そう言い切れるの?」
「勘だ。」
「...ふふっ...。」
どや顔で言われるものだから涙は流れているのに思わず笑ってしまった。
「女の子は笑っている方がいい。笑っているといつの間にか幸せがやってくるからね。」
「...そんなの迷信だもん。...私はそんなの信じない。」
「何事もとは言わんが気の持ちようが大切なんだぞ。少しは年寄りの言うことも聞いてくれ。」
「...でも。」
「....。」
「...生ける屍、にはならない.....ううん....戻らないように気をつける。」
頑張って作った笑顔を監督に見せた。
「頑張れ、とは言わんがくれぐれも無理はするんじゃないよ。つらかったら休むことも大事だ。」
「うん。そうだね...。」
なんか気持ちが楽になったみたい...。
こんな気持ちになるの、あの時以来だなぁ。
心臓に手を当てる。
トク、トクと規則正しい静かな音が流れている。
その音を聞いていたらなんだか手を当てているところがあったかくなった。