第23章 合宿
「ほら、食べ終わったんだし食器片づけに行くぞ。」
虹村さんが俯く私に声をかけて背中を軽く叩いた。
私は立ち上がって空の自分の皿を持ち、ついでに虹村さんの皿も持った。
「自分のは自分で持ってくって。」
虹村さんが私が持つ皿から自分の皿を取ろうとするが私がそれをさせない。
水道の方に早足で行ってそのまま他の部員の持ってきた皿も洗う仕事に専念して虹村さんと赤司くんと話すのを避けた。
「由良ちゃん、さっきどうしたの?」
仕事を終わらせ部屋に戻る途中さつきが聞いてきた。
「別になんでもないよ...。」
「...そっか。それならいいんだ。」
さつきは私が素っ気なく答えると、なんだか複雑な、寂しそうな顔を見せた。
そんな顔させてるのは、私、か...。
「さつき。」
「なぁに?由良ちゃん。」
「私、用事思い出したから先に部屋戻ってて。」
「うん...?分かった。」
用事もないのにさつきに嘘をついて先に部屋に戻ってもらった。
なんとなく部屋には戻りたくなかったから。
その足で体育館に向かう。
体育館には鍵も掛かっていなくて誰もいなかった。
中は閉め切られていたため暑かったが構わず中に入った。
体育館の倉庫からボールを一つ持ってきてゴールにボールを入れるでもドリブルするでもなく、ステージの下のところに体育座りをして自分の体と足の間にボールを入れて顔を横にしてボールにくっつける。
ため息をついて、目を瞑った。
なんとなく思い付いた曲を鼻歌で歌う。
誰もいない体育館、この曲、いつもは触らないボール。
嗚呼...落ち着く...。
眠い、なぁ。
「ちょっとだけ、だから...。ねか、せて...。」
誰に話しかけるでもない言葉を発して、そのままの体制で目を瞑ったまま意識だけはだんだん遠のいていった。